お知らせ

これからの開業

新規開業を考えておられる医師の方は今もかなりいらっしゃると思います。平成26年1年間に長野県内で開業した診療所の数は中信地区でクリニック5件、薬局6件。諏訪・茅野地区でクリニック3件、薬局6件。伊那地区で薬局6件。飯田地区で薬局2件。北信地区でクリニック7件、薬局9件。上田地区でクリニック2件、薬局2件。佐久地区でクリニック3件、薬局10件。トータルでクリニック20件、薬局41件となります。
 この数字は私が独自で集計したもので公式に発表されているものではありません。一時期の開業ブームに比較すればクリニック開業数は半分近くにまで減っては来ていますがそれでも1ヶ月に1~2件程度は開業している計算になります。今後もこのペースでの開業はしばらく続くものと私は見ています。
 
 改めて地域包括ケアシステムの趣旨を考えてみます。高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることが出来るように、医療と介護を統合的に提供する仕組みが地域包括ケアです(厚生労働省のホームページより)。つまり医療も病院完結型から地域完結型に移行していくと思われます。病院も高度急性期・急性期のように、算定要件が厳格化されて行く側と地域包括ケア病棟等を算定してく病院群と二極分化して行く中、地域には普段から様々な症状を抱えている高齢者が、常に自分の健康や疾病の管理、診断、治療をしてもらえるかかりつけ医の存在が必要不可欠になって行きます。私の様な患者側からしてみれば、かかりつけ医は総合診療専門医に近い存在であってもらいたいと考えます。消火器内科、精神科、泌尿器科、整形外科などの専門医に頼るケースもありますが、超高齢者となると複数疾患を抱えているケースが多くなりますし、その中には重篤な疾患も有りえます。この様な様々な症状を見落とさず、治療もしくはタイミング良く病院に紹介して頂ける診療所が今後より多く望まれると思います。

 これから新規で診療所を開業される医師の方々はこの様な地域ニーズにどの様に対応して行くべきか、また今後人口が減少して行く現状など、開業する地域の将来像を見据えた準備が必要になると思います。患者側も診療所の情報を良く確認しながら、かかりつけ医を選択して行く時代になります。開業に当たっては今までの様な単純な診療圏調査による外来患者発生数や収支予測だけの準備だけでなく、その地域特性や地域でどの様な立ち位置であるべきか、どの様な役割を担う事になるのか等を考察した上でのご開業を望みます。

医療タイムス紙 平成27年9月10日 掲載