お知らせ

CCRC構想について②

日本経済新聞に(27.11.13)「移住したのに都会にUターン」との記事が掲載されました。15年前より高齢者の移住を受け入れしてきた移住先進地である北海道伊達市を例に挙げ、高齢者移住の難しさを取り上げています。人口減対策として、市認定の生活支援ハウスなどを整備し、5年間で600人の高齢者の移住を受入れたが、2008年から転出入が拮抗、13年から転出が上回りしだしたとあります。地域になじめない人や介護が必要になって都市部へのUターンが増えているそうです。
 前回(27.10.10号)日本CCRCが地方創生の目玉政策として取り上げられていることを記しました。地方のCCRCに元気高齢者のうちに移住を促し、要介護になってからも終の棲家として住み続けられることが国の狙いです。

 私は、高齢期のセカンドライフを送る場所としてCCRCを捉え、移住を促す施策には強い違和感を持ちます。Share金沢や愛知のゴジカラ村のように、医療介護や生活支援など安心施設が整備された多世代交流型のコミュニティーを形成させ、地域全体で受け入れ支援する成功事例もあります。しかし高齢者の多くは、出来る限り今までと変らない生活を続ける事を望むのではないでしょうか。

 私は、日本版CCRCは、移住を前提とするのではなく、地域包括の枠組みの中で検討される方が、より高齢者ニーズを捉えた施策に成り得ると考えます。海外にある大規模な複合施設とは異なり、小規模であってもしっかりと地域に密着した施設である方が望まれる施設になると考えています。本来の在宅サービスが核となり、高齢者のニーズや介護度に応じて施設や住宅への入居や住み替えができる地域密着型複合型施設です。同一敷地内に多様な施設や住居が複合できれば理想ですが、物理的な制約もありますから、敷地外サテライト施設も活用したネットワーク型も有効であると考えます。

 「日本版CCRCを実現したい」思いを共にする医療法人様と共同企画し、12年に駒ヶ根市に「高齢者複合タウン」をオープンしました。全体で2000坪の土地に、まずコア施設としてグループホーム、小規模多機能、デイサービス、交流センターからなる「在宅ケアセンター」を先行オープンし、併設してサ高住25戸、高齢者戸建て住宅5戸を併設オープンし、完成に至りました。芝や植栽に拘り緑地部を多く設けました。住宅のリビングには図書コーナーを設け、暖炉を導入し家庭的な温かみのある語らい場としました。医療法人の経営であること、同一敷地内にある在宅サービス拠点が住居はじめ施設全体に安心感を与えているようです。

 現在全国200箇所で、世代交流型、アクティビティー型、産学連携型など様々なCCRCが検討されていると聞きます。高齢者ニーズも変化し、日本版CCRCの展開はますます多様化してくると思います。先進国アメリカでは、早くもCCRCの問題点が顕在化し問題視されることもあると聞きます。
 高齢者の生活のあり方が、ビジネス的、政策的に方向付けされてはいけません。高齢者目線からあるべき方向性を見定めて行きたいと思います。

医療タイムス紙 平成27年12月1日 掲載