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地域包括ケアシステム

 地域包括ケアシステムという言葉は最近良く耳にします。地域包括ケアシステムの中で医療機関や医療関係企業などが地域包括ケアシステムのスキームに、どの様な関わりを持って行けばよいのか等の声も聞かれます。地域包括ケアシステムの根幹は一体どのような物なのでしょうか。

 地域包括ケアシステムという言葉を提起したのは、広島県尾道市の公立みづき総合病院の山口昇先生である。先生が緊急手術をして命を取り留めた患者がリハビリを行い元気に退院しても、また1年から2年で再入院してくる現状があり、その多くが褥瘡をつくりしかも認知症症状が進んだ状態になっていることが多かった。この事に疑問を持ち調査した結果、患者の家族の共働きによる介護力の低下、おむつを当てて家の中で寝かせきりという療養環境であった事が分った。山口先生はこのような状況に対応すべく、医療を自宅に届ける出前医療、訪問看護、保健師の訪問、リハビリテーション、さらに地域住民による地域の活動の充実などの活動を導入するとともに。1980年代には病院に健康管理センターを増設し、ここに町役場の福祉と保健行政を集中させて、社会福祉協議会も移設し、文字通り保険医療介護の一体的な推進体制を構築することになった。このような取り組みが現在の地域包括ケアシステムの先駆けとなっている。
 厚生労働省ホームページの「地域包括ケアシステム」事例集成には全国から集められた地域包括ケアシステムの取り組み事例があります。その中に他の地域に参考になると評価された事例について詳しく紹介されていて、長野県に関しては佐久市、軽井沢町、富士見町、松川町、南木曽町の5市町村の取り組みが掲載されています。やはりそれぞれの地域特性を生かした内容になっています。
 私の住んでいる大町市を例にとって見ます。「第2次おおまち元気!スマイルプラン」から引用します。大町市の高齢化率の高いのには改めて驚きました。当市の人口構造は大きな変化をみせており、0~14歳の年少人口の減少、65歳以上の老年人口の急激な増加により、地域の高齢化の進行度合いを計る目安となる老年化指数【老年人口指数=65歳以上人口÷15~64歳人口×100】(100.0を超えると人口構造の若返りは難しいとされる)は昭和45年の34.2から248.0と大きな変化をみせています。また高齢者のひとり暮らしの数も平成12年の466人から平成22年には877人に増加しています。大町市の場合は何らかの生活支援を必要とする高齢者がたとえ、ひとりで暮らすことになっても、住み慣れた地域で安心して毎日を送る事ができるよう、公的なサービスを補完する地域の見守り活動やボランティア活動などによる支援がたいへん重要となっています。
 このような特性は地域により異なってきます。地域包括ケアシステムについては、高齢化の進展や地域資源に大きな地域差がある中、市町村や都道府県が地域の特性に応じて介護・医療・住まい・生活支援・介護予防が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を実現する事が求められています。
 75歳以上高齢者(後期高齢者)は、現在約1400万人となっており、2025(平成37)年には2000万人以上となる事が予測されています。また、単身や夫婦のみの高齢者世帯や認知症高齢者が近年増加してきており、今後も増加が見込まれます。
 高齢者の高齢者による介護、高齢者のひとり暮らし等、高齢者やその家族のみでは対応しきれない介護の現状が多くなってきています。公的なサービス(フォーマルサービス)とボランティア団体やNPOの育成、活動支援など、インフォーマルサービス(非公的な民間サービス)を充実させて自治体行政担当者、医療専門職、地域リーダー、事業者がそれぞれの役目を地域で果たして行く事で、より確実に真の地域包括ケアシステムの構築に近づくのではないのでしょうか。

平成27年2月20日 医療タイムス 掲載