お知らせ

地域包括ケアの実現

 2000年の介護保険が施行されて以来着実に高齢者の人口は増加し、現在までに要介護認定者も500万人を越えてきているのが現状である。高齢者数は2024年に3万8782(千)人、死亡者数は2039~2040年に1669(千)人のピークに達しその後は減少の傾向になる。反面後期高齢者は2030年に2万2874(千)人に増加、その後は横ばいで2041年以降再び増加する構図になっている。施設も通所や訪問介護事業者の数も増加している。しかし医療、介護が断片的に機能していて、そのつながりが総合的に提供されているかは疑問な所である。

 「住いと住まい方」、「生活支援」、「医療・介護」、「介護・リハビリテーション」、「保健・予防」の5つが地域包括ケアシステムの要素となっているのは周知のとおりです。最近東京首都圏域では要介護者の数に介護施設等の数が間に合わず、地方へ移住する人が出て来ている事も取りざたされている。地域包括ケアシステムでは高齢者の「尊厳の確保」が原則であり、高齢者自身が決定したライフスタイルを地域で全うできるようにするのが目的です。従って地域では高齢者が自己決定した住まい方や暮らし方についての選択に対応できるサービスを充実させる必要があります。もう一つ大事な事は、自立支援の立場から高齢者自身が要介護状態にならないために予防する努力や自身の機能維持に努力するように求められていいます。これは介護保険法第四条第一項に「国民の努力及び義務」として掲げられています。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの地域包括ケア研究所の報告書に「養生」という言葉が記載されている。地域包括ケアシステムの基本姿勢について「養生」という言葉を使い本人と家族の選択と心構えのあり方に触れている。「養生」とは単に健康法や病気の予防方法を意味するのではなく、自分自身の健康をも管理する意識の意味も含んでいる。これからは本人が自分から進んで疾病を治していく意欲を持ち、その成果を体感できるための施設に積極的に参加する必要が出てきます。

 そのためには健康管理のためのセルフマネジメントプログラムの提供が必要になってきます。保健師・看護師・ケアマネジャーのこれに向けた教育体制も要求されて来ると思います。自治体は「養生」を選択する高齢者や介護サービスを提供しなければならない高齢者に対して、それぞれに合った支援をするべく努力する必要があると思われます。その中でも私は医療、介護の連携による情報の一元化の実現が今後特に必要になって来ると思います。2025年に後期高齢者や、高齢者になられる方の「養生」の意識に適応できる地域包括ケアシステムの構築が進んでいくことを望みます。

医療タイムス紙 平成27年7月1日 掲載