お知らせ

診療所の第三者事業継承~信頼おける仲介者に~

 診療所の新規開業は現在も年間十件前後はあります。当然戸建てで開業されるケースが多いのですが、以前に比べて第三者事業承継の数が増えてきました。子供が診療所を継がない等さまざまな事情により廃院せざるを得ない事もあるかと思います。ただ地域医療を担ってきた診療所が廃院となると、頼りにしてきた地域住民も不安になる事もあると思います。承継条件もいろいろ検討しなければなりませんが、医療機関の存続を選択して第三者に承継をしてもらう事は、地域住民にとっても医療充実の面を考慮すると大事な事だと思います。
 さて、実際に第三者が承継する場合に必要な事や注意する事は何でしょう。承継の形態が売却なのか賃貸なのかを決定します。売却額や賃貸料は専門家に入ってもらい算出する方法をお勧めします。第三者承継をする場合、金額の折り合いをどの位で付けるかの検討課題がありますが基本的には、両者の話し合いで合意させることになります。今まで既存の診療所に通院されていた患者さんをそのまま引き継げる事が出来るとなれば、新規開業するよりも集患上のメリットが考えられます。これを営業権と言います。いわゆるのれん代(超過収益力)の事です。どのようにその額を算出し、どう反映させるかについては顧問の会計事務所等にご相談されるのが良いと思います。
 手続き上では個人診療所を承継する場合、各行政省庁への届け出等も注意が必要です。土地に関してですが、事業用定期借地で診療所を運営してこられて第三者に承継する場合は、契約の内容を確認する必要があると思います。定期借地権の第三者への転売や転貸に関する項があると思いますので、地主さんとの話し合いにより承諾を得る必要があると思います。スタッフの採用に関しても新たに雇用するのか、現スタッフを継続雇用するのかの選択もあります。これらは承継する医師の考えによる所だと思います。
 もうーつは承継するタイミングです。患者さんの前院長への信頼は大きなものがあると思いますので、承継した後も週に何日かは前院長にも診療を担当して頂き、徐々に引き継いでいくのも良いのではと思います。
 いずれにしても、承継を決断したらスムーズにいくように早い段階から準備を進めて、出来れば信頼のおける仲介者に入ってもらう事が大事だと思われます。

平成29年3月1日 医療タイムス紙掲載