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設計段階から施行効率検証~建築工事の発注方法~

 診療所や介護施設など医療福祉施設の建設プロジェクトにあたり、発注形態としてどのような種類があり、どのスタイルが最も適しているのかと悩んだ経験をお持ちの方もいるかと思います。本稿では、民間における代表的な発注方式や、昨今オリンピック競技場など国家プロジェクトでも注目されている「デザイン・ビルド方式」の利点について取り上げます。
 まずは従来まで一般的とされてきた発注方式「設計・施工分離方式」です。これは文字通り、設計と工事を別々の者が担当するものです。設計事務所が詳細設計まで完成させ、その後に入札を経て決定した施工業者に工事を依頼します。施工業者選定の基準の多くは「予算内で最低価格を応札した」施工会社となります。
 ただ医療関連施設では、より高度な意匠性・機能性を期待する事例も多くあります。その場合、前述の発注スタイルに加え「プロポーザル方式」「デザイン・ビルド方式」といった方式を採用するケースが増えてきています。
 「プロポーザル方式」は、複数の設計者に概略設計提案をさせ、最もコンセプトの優れた設計者を選定するスタイルです。事業主側の与件設定や選定業務の取り纏め役として、CMr(コンストラクション・マネージャー)を介在させる場合もあります。
 「デザイン・ビルド方式」は、受注した建設会社が設計から工事までを一貫して対応するものです。
 当方式の利点として、以下の2点があげられます。①建設会社固有の施工や維持管理に関するノウハウを設計に反映でき、開業後の建物不具合リスクを低減できる。②設計段階から施工準備や事前材料手配に手が付けられ、全体工程を短縮・開業時期の前倒しも可能となる。
 さらに請負者が単独であることは、全ての情報が一元化されるため、情報共有のスピードに繋がります。情報共有の向上は、例えば工事部門から設計部門へ標準化提起によるコストと品質の改善など、全体最適化に向けたPDCAサイクルにより、スパイラルアップをもたらします。  
 また、昨今急速に活用が進んでいる「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」という手法があります。これは『デザイン・ビルド方式』の利点をさらに助長させるツールと言えます。最大の特徴は三次元建築モデルを用いた可視化であり、設計段階から施工効率の検証水準が向上します。建築部材数量の自動計算も可能となり、見積労力の軽減など省力化による生産性向上が図られます。また、三次元建築モデルにより、エ事着手前の事業主と施工者の合意形成を円滑にする成果をもたらします。
 今後の展望としては、施設運営側でもBIMを活用することで、建物の維持管理を効率化する取り組みも加速するものと考えられます。