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早めに専門家に相談を~個人と医療法人のM&A~

 帝国データバンクの「後継者不在企業の実態調査」によると、後継者不在率が「無床診療所」90.3%、「歯科診療所」89.3%、「有床診療所」81.5%となっており、医療機関の8~9割は後継者不在の問題を抱えている実態があります。
 事業承継の課題を抱える中小企業経営者の課題解決方法として、第三者承継=M&Aが当たり前になってきており、今回は個人医院と医療法人のM&Aの違いについてご説明致します。
 表①の個人クリニックから個人の開業医が引継ぐ場合には、クリニックの土地、建物、医療機器といった資産を引き継ぎ、それ以外の資産は原則として引き継ぎません。例えば負債や従業員との雇用契約は原則として引き継がれませんが、承継開業医が従業員を継続して雇用したい場合には譲り受ける新院長との間で新たに雇用契約を交わすことが可能です。患者様のカルテ情報についてはそのまま引き継ぐことになります。
 表②③の医療法人を個人の開業医が引き継ぐ場合には、②の医療法人(旧法:持分あり)のケースの方が圧倒的に多いです。旧法の医療法人(持分あり)は、出資持分(財産権)が認められているのが特徴です。この出資持分を譲渡対価(売買金額)として医療法人をそのまま引き継ぐことが可能です。①の個人クリニックの引き継ぎ同様に、クリニックの土地、建物、医療機器等は引き継ぐのは勿論ですが、それ以外の資産・負債も引き継がれる点が、①のケースとの大きな違いになります。つまり、承継前の医療法人が負っていた負債(借入金やリース債務残)や医療機器の保守契約、賃貸借契約、従業員との雇用契約、カルテ情報などを包括的に引き継ぐということです。ちなみに、診療に関する法的責任、税務リスク、労務管理リスク、についても引き継ぐことになりますので、M&Aを実行する前に専門家による調査(DD:デューデリジェンス)を必要とします。
 今回は一部の例をご紹介しましたが、個人クリニック、医療法人どちらで運営しているかにより、承継する場合のメリット・デメリットがさまざまございます。
 後継者不在の先生方にとってM&A=第三者承継を選択される場合には、承継する開業医を探すのに時間がかかることは勿論ですが、その他さまざまなことを検討していく必要がございますので、早めに専門家に相談することをおすすめします。
  令和2年11月1日 医療タイムス紙掲載 
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