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設立時拠出の基金返還~解散前の前倒しも~

 経営が安定し医療法人に資金が貯まってきた場合、一般的に医療法人から現金を引き出す方法は役員報酬か退職金が考えられます。しかし、役員報酬を上げると先生が高額な所得税を負担することになります。退職金は所得税の優遇措置がありますが、理事就任中に何度も出すことができません。そこで「基金の返還」という方法をご紹介します。
 「基金」とは医療法人に拠出された金銭等で医療法人が返還義務を負うものをいいます。基金の返還とは、法人に拠出した基金を返してもらうことです。あくまで返還ですので、先生の所得には該当せず所得税はかかりません。法人解散時に残余財産がある場合には基金の返還が当然に行われますが、解散前においても前倒しという形で返還を受けることができます。

 基金の返還ができる場合
 2007年の医療法改正により、それ以降に設立された医療法人は出資持分のない法人に限られ、その多くが基金拠出型医療法人となっています。基金の返還ができる法人は「持分のない基金拠出型医療法人」に限られます。つまり決算書に「基金」という科目がある法人です。決算書に「出資金」という科目がある法人は、今回のテーマには該当しません。
返還金額は、「ある会計年度に係る貸借対照表の純資産額が、拠出基金の総額と資本剰余金の額、評価・換算差額等の額の合計額を超える場合、その超過額を限度として基金の返還をすることができる」とされています。ただし、設立総会議事録において設立後一定期間は返還できないことと定めている場合もありますのでご注意ください。

 基金利息の禁止
 基金の返還のイメージとしては、先生が法人に基金という形で拠出した金銭等を、法人に利益が溜まってきたため返してもらうということになります。ちなみに、通常の金銭の貸し借りとは異なり返還される基金について利息を付することは禁止されています。
基金の返還ができるのはあくまで拠出した基金が限度額です。法人に資金的な余裕があるようでしたら検討されてみてはいかがでしょうか。

平成28年11月1日  医療タイムス紙掲載