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役員退職金の準備~生命保険の活用も~

 医療法人を経営されている先生にとって、役員退職金をいつ、いくら支給するかは、重要なテーマです。役員(医療法人の場合、理事・監事)に対する退職金は、永年の勤務に対する報酬であり、退職後の生活を支えるものであるため、役員報酬として受け取るよりも所得税・住民税が優遇されています。ただし、いくらでも支給していいというわけではありません。不相当に高額な役員退職金は法人税法上、経費として認められません。一般的には「功績倍率法」といって、「最終報酬月額×勤続年数×役位(理事長、常勤役員、非常勤役員など)に応じた功績倍率」で導き出された金額が一つの目安とされています。また、役員退職金規定をしっかり整備し、実際の支給に際しては社員総会・理事会での支給決議を行い、その議事録を作成しておくのがポイントです。
 役員退職金を支給するには、その原資としてかなりまとまった金額を医療法人で用意する必要があります。そこでよく活用されるのが、生命保険を活用する方法です。先生の勇退予定年齢に保険解約した場合に最も解約金の返戻率が高くなるよう、保険を設計するわけですが、このとき支払う保険料は一部が損金になります。つまり法人税の負担を抑えながら、役員退職金の原資を準備できるのです。勇退時には保険を解約しますが、このとき解約金の一部は法人税の対象となります。ただし、同時に役員退職金を支払うことで、利益と経費が相殺され法人税負担を抑えることができます。
 役員退職金は、税務上のメリットが大きい反面、過大な支給や退職の実態を伴わないものとして税務当局に否認されたときのリスクは、非常に大きいものがあります。税務上・財務上いくら退職金を支給できるのかを顧問税理士とよく検討し、長期的なプランを練っておくようにしましょう。

平成28年11月10日 医療タイムス紙掲載