お知らせ

不動産取引の賃借権~

今回は、身近にありながら意外に難解な「不動産取引」第二弾として「賃借権」を取り上げます。
「賃借権」には、二つの概念があります。
◎一般法と特別法
建物を建築する目的で土地を賃貸借した場合、当事者の意向に関係なく「借地借家法」が適用されます。
当事者同士で民法上の規定に従い契約を締結したとしても法律的には無効となります〔強行規定といいます)。これは民法目「一般法」、借地借家法11「特別法」という関係があり、内容が重複する場合、「特別法」の条文がコ般法」の条文より優先されるという規定に因ります。コ般法」は広い範囲の人や事象に適用されるため「普通法」とも言われます。これに対し「特別法」はコ般法」より限定的な人や事象を対象として適用されます。
「借地借家法」は不動産の「賃貸借」に限定した「特別法」となります。「借地借家法」では契約期間・更新期間が定められているため契約時には注意が必要です。それ以外にも知っておきたい事としては『賃借人の権利の強さ』があります。「法定更新」もその一例でしょう。「法定更新」とは契約満了時に期間が自動的に更新されることです。「法定更新」後の契約期間は建物の場合は期間の定めなし、土地の場合は20年以上と定められています。
なかでも借地契約の場合、期間満了時に建物が残っていれば「法定更新」が認められるため、貸主は実質的に拒絶できません。仮に「法定更新」を拒絶する場合は、『正当事由』と『立退き料の提供』が必要とされます。特に『正当事由』には、明確な基準がなく裁判官の裁量になりますが、貸主側に喫緊した理由が必要とされます。「立法趣旨」から見ますと、民法は広義の「弱者保護」、借地借家法は「賃借人保護」に基いています。こういった「立法趣旨」から考えると、民法に比して借地借家法がより賃借人側に立った内容になっているのは当然といえるのでしょう。このように不動産取引では、専門性が必要な事案もありますので、後顧の憂いを残さないよう確かな専門家の介在をご検討されることをお勧めします。

平成29年6月10日 医療タイムス紙掲載