医院承継は「承活」から
私たち会計事務所がクリニックの承継実務に関わる中で、院長交代そのもの以上に、その前段階である「準備の期間」にこそ重要性があると感じています。
特に第三者への承継の場合、現院長と後継院長とのつながりが十分でないケースが多いため、事前の助走期間がより重要になると言えるでしょう。
人生に終活があるように、クリニック経営には承継を見据えた「承活」ともいうべき整える作業が必要です。この承活をどこまで丁寧に行えるかで、承継後の経営の安定度は大きく左右されます。
クリニック承継に際しての財務面の典型的なトラブルとしては、建物や医療機器の老朽化に伴う多額の修繕費や不要設備の処分コストが生じてしまったことなどがあります。
事前に会計帳簿を確認し、クリニック経営に関係のない資産や負債、ランニングコストなどを整理していくことが不可欠です。こうした整理により後継者は余計なリスクや手間を避けられます。
人材・組織面でも注意が必要です。承継後にスタッフ間のハラスメントの問題が表面化し、後継者が困難な対応を迫られる例もあります。
スタッフの役割や責任の整理に加え、就業規則や給与・退職金制度を法令やクリニックの実態に合わせ整備しておくことが重要です。制度不備は労務トラブルの火種となり得ます。
医療法人であれば、役員への貸付や借入の整理、不動産賃貸契約や保険契約の名義確認が欠かせません。税務調査で指摘を受けやすい取引の有無も点検しておくべきです。
診療プロセスや法令遵守の不備が承継後に判明し、予定していた収益を得られなかったというような事例もあります。
第三者への承継では、こうした関係者との信頼構築や事前の情報共有が承継成功の大きなカギとなります。
また円滑な承継事例の中には、地主の協力を得て交渉がうまく進んだケース、問題職員が承継前に退職したケース、修繕や設備の更新が計画的に進みスムーズに引き継げたケースなどがありました。
承継は現院長にとって最後の大仕事です。次世代への橋渡しのための課題は多岐にわたるため、専門家に相談しながら整理を進めてはいかがでしょうか。
