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人事・労務

LABOR MANAGEMENT

評価制度はスタッフの通信簿
単なるモノサシではなく
スタッフ育成の手段です

どうすればスタッフはよく働いてくれるか

時間と労力をかけてスタッフを採用しました。先生は、「よく働くいい人がきてくれた」と喜ばれているかもしれません。
しかし、「いい人」がきてくれても、そのスタッフがずっと先生のクリニックで働いてくれるとは限りません。そのスタッフがずっと「いい人」でいてくれるかどうかもわかりません。
とはいえ、これからクリニックを続けていくからには、スタッフには常によく働いてもらわなければ困りますね。
では、どうすればスタッフはよく働いてくれるでしょうか。
高い給与を支払えばいいのでしょうか。高い給与は、ひとつの要素にはなるでしょう。けれど、開業して間もない先生が支払うことができる金額には限界があるでしょうし、「おカネでは人は動かない」と言われるように、給与が高いだけで、ずっと先生が求めるようによく働いてくれるかどうかは疑問です。
先生の「スタッフによく働いてもらいたい」との思いを実現するために存在するのが、人事制度です。

評価制度とは

人事制度のなかで、重要なもののひとつが評価制度です。
先生がスタッフの時給を50円上げたとします。先生は「A子さんは頑張っているから、時給を50円も上げておいた」と思っていても、A子さんは「50円しか上がっていない」と不満に思っていたらどうでしょう。
そうならないように、あらかじめ基準を決めておき、時給50円の差が大きいのか小さいのかといった価値観をスタッフと共有しておくことが大切です。たとえば、「非常によく頑張った人は50円、まあまあ頑張った人は30円、そうでもなかった人は10円」と昇給額を知らせておけば、A子さんは自分が高く評価されていることを知って、うれしく思うはずです。さらに、「非常によく頑張った」と評価したのはこのような仕事をしていたからだ、ときちんと説明することで、何をどうすれば給与や賞与が増えるのかが明確になって、仕事に対するモチベーションもアップするでしょう。
これが評価制度です。

評価制度のポイント

求めるスタッフ像

評価制度を実施するに当たっては、まずは先生が求めるスタッフ像を明確に提示することです。その求めるスタッフ像は経営理念から導き出されます。つまり、「このようなクリニックにしたい。そのためにはこのようなスタッフであってほしい」というスタッフ像です。

評価基準

そして、評価のために基準を設けます。
スタッフに求める要素を項目にして、それに対して評価の段階を設けます。
たとえば「清潔さを保ち業務を遂行している」という項目をつくり、そこに「1.指導を要する」「2.やや問題がある」「3.普通」「4.よくできている」「5.模範的である」といった評価の段階を設けるのです。
イメージとしては小学校の通信簿のようなものです。

フィードバック

先生が評価したら、スタッフ面接を行ない、結果をフィードバックします。評価が高い項目については「こういうことを頑張ってくれた」、低い点については「この点はこうしていったらどうだろうか」というように伝えることが大切です。

評価制度の効果

評価制度があると、あらかじめ決まっている一定の基準によって評価するので、スタッフ間の公平性を保つことができます。そればかりか、個々のスタッフの納得も得られやすくなります。このことが、スタッフがモチベーションを高めて仕事をしてくれることにつながります。また、評価基準をあらかじめ提示することにより、先生がスタッフに求めていることは何であるかを伝えることができます。
評価制度は単なるモノサシではなく、先生が求めるスタッフを育成していく制度でもあるのです。

目標管理制度でスタッフの満足度を高める

職場内のコミュニケーションがトラブルの軽減につながります。
コミュニケーションをとる取組みを実践しましょう。

コミュニケーションを図るために

スタッフとのコミュニケーションを図る目的の一つは、業務を円滑に進めることにあります。しかし、目的はそれだけではありません。スタッフの満足度を向上させることもおおきな目的です。スタッフ満足度の向上は、労使トラブルを防ぐばかりか、顧客満足度の向上にもつながります。
スタッフの満足度を向上させるコミュニケーションとは、どのようなものでしょう。たとえば、先生が描いておられる、こういうクリニックをつくりたいという思いをスタッフが理解すれば、そのスタッフの仕事に対する姿勢は変わると思われませんか。また、先生に自分が頑張っていることを評価され、今後のアドバイスまでもらえたら、スタッフは気分よく仕事に取り組むことができるのではないでしょうか。
ただ、そんな話をする機会をつくるのは、なかなかむずかしいものです。タイミングを見て休憩時間に話すのは、いささか唐突すぎるような気もします。
長く続いているお昼のテレビで、サイコロを振って出た目に書かれたお題について話をする番組があります。あのように、お題が決められて、それについて話をすると決められていると、結構話ができるようです。サイコロは話をするための一つのツールです。
クリニックにもそんなツールがあればよいのです。先生とスタッフが話ができる機会をつくる、そのツールが「目標面接制度」なのです。

目標面接制度とは

目標面接制度は、具体的にはつぎのように行ないます。
まず、先生とスタッフが面接をして、スタッフの目標を設定します。(設定面接)。このときは、先生からクリニックとしての目標を説明し、それを踏まえたうえで目標を設定してもらいましょう。ここで未来のクリニックについて、先生の思いを伝えることもできます。
そして半年後にまた面接をします(中間面接)。ここでは、目標の進捗状況などを確認し、必要であれば先生からスタッフにアドバイスをしたり、目標を修正したりします。
さらに、目標設定から1年後に再度面接を行ないます。(フィードバック面接)。目標に対して結果がどうであったかを確認し、よくできた点については評価します。あわせて、つぎへの課題を見つけてアドバイスすることも大切です。
面接を年に3回するような記述になりましたが、3回目のフィードバック面接とつぎの年の設定面接は同じ時期に行なうことになるでしょうから、実際には年間2回です。

目標面接制度がもたらす効果

目標という要素が、さまざまな効果を生み出します。
クリニックの目標を踏まえたうえでスタッフが自身の目標を設定することにより、クリニックにおける自身の存在意義を見出させ、それを自覚させることができます。挑戦目標をもつことで、意欲をもって仕事に取り組むことにもなります。また、目標を達成した際に充実感を味わうことにより、スタッフにはさらなるステップアップを目指す意欲が出てくるのです。